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九月

 

 

 

 

風が強い日。

ベランダの洗濯物は、はたはたと大きく揺れそのカラフルな色を散らす。道路を見下ろすと、歩きながらベビーカーを押す母親は子供を風から守ろうと必死だった。ふんわりしたほっぺが柔らかそうで、こぼれそうな笑顔で横になっている姿がちらっと見える。無垢で真っ白。赤ちゃんは汚れを知らず、小さく丁寧に呼吸する。

夜風を切って、自転車を漕げたらどんなにいいだろう。ぐんぐん走る。景色も見ずにまっすぐ。まとわりつく余裕もない速さで、髪も身体も後ろに引っ張られてく。まだ暑さの名残で潤む空気を肌に感じながら、そんな考えをうつろに転がし、遠目に色んなものを眺める。

季節がまた過ぎていく。去年もいつの間にか残りの夏を見落としてしまったように、境界線をいとも簡単に越える。いつもそう。気づいたときにはもうそこに居る。望んでも望まなくても。手からすり抜けていくものは、振り返った時にはもういなくて後悔だけが心の奥に住み着く。

 

近くの古本屋さんが、閉店になるようでとても悲しくなった。いつもは駐車場に一、二台しか停まっていないのに、満車になるくらい入っていて、何があってるんだろう?と疑問に感じながら中に入る。

最終セールが行われていて、人がいっぱいの中を歩いて本を探すのはちょっと大変だった。一つの箱の空間に人が沢山いるのは、ぎゅうぎゅう詰めのお菓子を思わせる。酸素が薄くなって、少し息苦しい。何冊か買って、店を後にする。

近所にあり、何年間もよく本を買っていた店だった。店員さんは忙しそうに走り回り本をあちこちに積み上げていた。ふと男性の店員さんの視線を感じて、そちらをみると目があった。ずっと勤めている方で話したことはないけど、勇気を出して「ありがとう」や「お疲れさまでした」とか、声をかければよかったな…。

どんな気持ちがするんだろう。。いつも接客の態度はきびきびとしていて声は大きく、凛とした態度で本の中に佇んでいた。お店を愛しているように私の目には映った。

あと残り少しでお店はなくなり、力が入らず手を抜くことも可能なのに、最後までその姿勢を崩さず勤め上げる姿は、素晴らしいなと思った。

何でも最後にその人自身が表れると様々な場面で感じる。出会うときより別れ。最初は優しいけど終わりは冷酷な人。関係性を曖昧に宙に浮かべながら消してく人。最後までズルいくらい甘くて余韻を残す人もいる。

 

たまに通る道の一角にある、訪れたことはないけど知ってるレストランがいつの間にか潰れてたり、久しぶりに訪れた個人店が前より活気がなく、店長のおじいさんも悲しそうに疲れてたりしたら、なんともいえない寂しい気持ちになる。

自分が止められることではないけれど、思い出の景色の変化は時の流れをすぐ側に感じる。

 

風がよく吹いて、気温が下がってくるとわけもなくさみしいなぁと思う日が増える。

お気に入りの毛布を出したり、冬のこたつの準備、秋服の買い物、ココアを買い込んだり。苦手な夏がいなくなって、秋がくるのは嬉しいはずなのに、複雑なきもちをもて余す。

昨日の夢は、会いたい友達が出てきて、ずっと笑って話をしてていい夢だった。今度いつ会えるかわからないから、ちょっぴり切なかった。

きっと九月もあっというまにいなくなって、冬の足音が聞こえてくるんだろうなぁ。。