雨とワニ

 

 

 

 

夜中のぽつぽつと降る雨は、やさしく道路を濡らし、走る車や街全体をすっぽり靄で隠してしまう

ベランダからみえるライトアップされた遠くの橋の光、濃い紺色と同化した鉄塔、水分に絡めとられたようにぼんやり歩く人達も、夜の雨の下ではどこか寂しそうにみえる

私は、夜中も雨もとても好きなので、ふたつの組み合わせはお皿に乗ったひとつのアイスに、もうひとつおまけがぽんっと乗せられた感じ

雨の音は、やっぱり人を落ち着かせるのかな…?そういうアプリを前にみつけて、もしかしたら私みたいに雨の音で癒されるひとたちが沢山いるのかもしれないと思った記憶がある

土曜日の夜中は、永遠と夜が続きそうで、広々した芝生に手足を伸ばして転がるようなきもちよさでいっぱいになる

幼い頃は、学校があるから早く眠らなくちゃいけなくて、だけど目を閉じても全然眠れず、寝返りをうったり毛布をさわったり。

お水を飲みにキッチンへ行くと、部屋の奥でチクタクする時計の音が耳に入る。しんとした空間に響く時計の秒針は、本当に怖くて、静かに足音を消して襲ってくる動物を思わせた

目をつむって、走ってベッドに戻るけどなかなか心臓をおちつけるのに時間がかかり、そのうち疲れて眠ってしまうことがよくあった

するとある日、父が「時計の秒針は、怖くない。大丈夫。ピーターパンのワニを思い出したらいいよ」と言ったのを覚えてる

その時は、ピーターパンをまだ観たことがなくて、「?」というきもちだったけど、時計をのみ込んだワニは、かわいらしくてそれからあんまり怖くなくなった

お話を観た後は眠るときに、フック船長がチクタクワニを怖がるところを想像して、そこから妄想が広がり、頭の中の空にいろんなものを浮かばせた

 

今でもたまにそのことを思い出して、やさしく懐かしいきもちに浸る

夜寝る前にお話を聞きたくなったり、好きな文章を読みたくなるのは、こんな経験があるからかもしれない

 

フック船長はワニがきらいかもしれないけど、私はワニがとても好き

私の中のワニは、首にリボンを巻き、穏やかな目をして、いつも隣に寄り添ってくれている